深夜の山で不可解な出来事
山の奥地で一晩、寝た事があるだろうか?
深夜3時、ふいにあなたはトイレがしたくなる。
まぶたを開けても閉じても同じ暗闇の世界だ。
立ち上がろうとした時に落とす、小石の音にびっくりするだろう。
それくらい静寂で静謐な無音の森。
やがて目が慣れてぼんやり見えるのは、
圧迫感のある山の稜線と、無数の星屑たち。
自分一人だけの素敵な時間だ。
しかし、そんな時が一番危ないのかもしれない。
山は常に代償を求める。

八ヶ岳へ一緒に登った友人と話したら、
お互い記憶が食い違っている、ある場面があった。
それは深夜3時の山中での出来事だ。
私は尿意を感じテントを出た。
周りには私たち2人しか居ない寂しい場所だ。
トイレをすませてテントに入ると、
薄いシートごしに、友人のテントに白い光が灯ったのが見えた。
彼がヘッドライトをつけたのか、起こしてしまったらしい。
悪いね、と思いながらまたすぐに眠りについた、、、

後日。友人から、
「あの日なんか深夜、起きたよね?」
「そうそう、トイレをしてたんだよ。」
「その後、俺のテントに来たでしょ?あれって何だったの?」
「え?行ってないよ。」
「ん??だって俺のフライシート(テントに被せるシート)のジッパーを
開けたじゃん。入り口で座って待ってたみたいだけど、、、」
「いやいや、すぐに自分のテントに入ったから行ってないって。
そういえばその時、ヘッドライトつけて起きたじゃん。」
「いや、一回もヘッドライトなんてつけてないよ。」
「ええ?テント越しにヘッドライトの白い光が見えたよ!」
「俺のヘッドライトは豆球だよ!光は黄色だって!」

思い返せば、その次の日は奇妙な一日だった。
阿弥陀岳で私はハイになってしまい、どんどん登っていると、
「田中!! 田中!!!」
と友人の叫び声が聞こえた。
ハッとして、急いで友人の所へ下りると、
その辺りだけ何故か霧が濃く、動けずにいたのだ。
その後なんとか頂上に行き、急なガレ場を下りて行くと、
足元が不安定な道になった。
後から来る友人の落石が体をかすめた。
こんな道は知らない。
どうやら道を間違えたらしい。
再度、登ろうにも地盤が緩すぎて登れない。
困った。
しかし幸いな事に7m横に登山者の姿が見えたので、
そちらへ斜面を横断して戻り助かった。
道をたった7mずれるだけで地獄が待っていたのだ。
山は危険と言いつつも、今まで一度も危険な事なんてなかった。
僕たちはこの日の事を教訓にしつつも、
どうしてもあのテントの夜に結びつけてしまう。
やはりあの時、地獄から迎えに来られたのだろうか?


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